その後、第2、第3の情報提供者も出てきている。だが、自衛隊の中で安倍のことを悪くいっていたことは事実のようだが、決め手になるものはない。

 そうこうしているうちに件の人間は、自衛隊を退職してしまう。

 文春はその人間に文書を送った。回答書には、山上と会ったことは自衛隊側の話で聞いたこと、山上の顔は「テレビで見て知った」と書いている。

 長々とページを取っているが、要は、安倍元首相の生前から、安倍のことを批判していたことは事実で、山上と居酒屋で一緒になったかどうかは、本人の記憶にはないようだ。

 思わせぶりな書き方で、文春は、「これまでの取材で確実に言えることは、『安倍を葬れたことは感無量』と堂々と取材に答える人物が海上自衛隊にいたこと、そして安倍氏暗殺事件に関連して複数回、事情聴取を受けていたことの二点だ」としている。

 だが、海自は4万人以上いる。その中に安倍の悪口をいう人間は、少なく考えても2人や3人はいるだろう。海自の中では要注意人物でマークされていたのだろうが、山上の黒幕というには根拠が薄弱すぎはしないか。

 文藝春秋6月号では「赤報隊の正体」というのをやっているが、いまさら朝日襲撃事件の黒幕が野村秋介ではないかと、彼の関与を匂わせるのは文藝春秋らしくないし、スクープでも何でもない。私はそれより統一教会の関与のほうが可能性大だと思っているのだが、それに全く触れないのはなぜなのか? 

 文春ジャーナリズムにやや黄色い信号灯が灯ったと見るのは、私の僻目だろうか。