──歴史エッセイスト・堀江宏樹が国民的番組・NHK「大河ドラマ」(など)に登場した人や事件をテーマに、ドラマと史実の交差点を探るべく自由勝手に考察していく! 前回はコチラ

 『どうする家康』第17回は、決死の覚悟で武田軍との戦いに臨む徳川家康(松本潤さん)とその家臣、そしてその家族たちの姿が描かれました。戦闘シーンはありませんでしたが、両軍の戦いぶりを自身の眼で見ようとした井伊直政(板垣李光人さん)が、徳川軍の死者の山や、家康の金陀美具足を身に着けた遺体が武田兵に運ばれていくのを目撃する様子は描かれました。徳川軍があっという間に大敗し、武田軍の圧倒的な強さが浮き彫りにされるよい演出だったと思います。

 史実においても、午後4時ごろに戦闘が開始されたにもかかわらず、午後7時くらいには勝敗が完全に決していたそうで、3万以上という兵力の武田軍に対し、徳川軍はその半分以下の1万1千程度しかおらず(そのうち3000が信長からの援軍)、完全に力負けだったという印象があります。徳川・織田の連合軍は少なく見積もって約300名、多く見積もれば全軍の1割程度=1000人前後の兵を失う惨敗でした。