『ストⅡ』の翌年、海を越えたアメリカにも対戦格闘ゲームが誕生した。『モータルコンバット』だ。「命がけの戦い」という名のこのゲームはなんと、実写取り込みのキャラクター同志が戦うのだ。
『モータルコンバット』が『ストⅡ』の流れを組む和製格闘ゲームと一味違う点は、相手のキャラに止めを刺す必殺技‟フェイタリティ”(日本語訳は「究極神拳」)の存在。相手を炎で燃やし尽くして骸骨に変えたり、相手の首を脊髄ごと引っこ抜くといった残酷な技の数々は、アメリカはもちろん日本人のゲーマーの度肝を抜いた。
人気を受け、当然のように実写映画が作られた。『モータル・コンバット』は『スーパーマリオ 魔界帝国の女神』『ストリートファイター』たち失敗の記憶も生々しい1995年に公開。
血なまぐさい残酷ゲームの映画化なんだから、ゲームに引けを取らないスプラッター、ゴア描写の数々で全米の劇場を絶叫の渦に巻き込むのだろう……と思いきや、夏休みシーズンに公開された同作のレイティングは、PG-13(13歳未満は保護者同伴が望ましい)。このレイティングでは残酷描写は望むべくもなく、気の抜けたユーロビートが流れるこの作品は、どう見ても「命がけの戦い」には見えなかった。
しかし「残酷な描写がないからお子様も安心」という路線が全米のパパママを安心させたのか、『ストリートファイター』を上回るスマッシュヒットとなり、監督のポール・W・S・アンダーソンの名を一躍高め、彼はのちに『バイオハザード』シリーズ、『DOA/デッド・オア・アライブ』、『モンスターハンター』とゲームの実写映画を次々手掛けることになる。そして彼のすべての映画が「ゲームと映画は違う」ことを思い知らされるのだ(やっぱり)。
だが2021年にアンダーソン監督の手を離れリブートされた『モータルコンバット』が登場。今回のレイティングはR指定。ついに‟フェイタリティ”が映画館で解禁され、全米格ゲーファンが熱狂。超大作『ゴジラVSコング』を蹴散らして首位スタートとなった。