さらに、七実の弟・草太に扮(ふん)する吉田に対しては、「彼がダウン症であることを忘れてしまうくらい、本当に楽しく一緒に弟として接しているし、自然に関係を築き上げてきていると思います。クランクインする前に家族のキャストみんなで会う時間があったんです。私もダウン症の方とお芝居したこともないし、ちゃんと面と向かって会話したこともなかったので、構えるフィルターはありましたけど、部屋に一歩入ってあいさつしたところから、本当に葵くんと仲良くなりたい、葵くんとおしゃべりしたいということしか思わなかったです。本当に最初の数秒で構えはなくなりました。それは人と人として、私が吉田葵くんにひかれたから、面白いと思うから、かわいいと思うから、それしかないですね」とあっという間に打ち解け、本物の姉弟のような気持ちになったことを報告。
加えて、「葵くんにとって、苦手だったり時間がかかることがあるのは事実なので、彼に演じてもらうっていうのはすごく大きなことで、やっぱり簡単なことじゃなかった」と現場での状況もうかがわせ、「ドラマでこういうことをしている作品をあまり見たことがないし、日本の映像作品の中では大きな一歩で、みんなそこに対して努力をしたと思います。葵くんができないこと、立ち止まってしまっていること、時間がかかっていることに対して、みんな思いやろうと努めています。本来、それは葵くんに対してだけじゃなくて、みんながみんなに対してすることだっていうのは考えますね。そしてこの作品で葵くんが希望や勇気を与える人が日本中にどれだけ居るか、それを誇りにさえ思います」と吉田との共演を通して、感じることは多かったようだ。
そして、大九監督との作品作りには「後半にかけて思い悩むこととか、話し合わなきゃいけないこととか出てきましたけど、大九さんならではの思ってもみなかったような動きを突然要求されたり、このカットって何?みたいな、今、何を撮っているの?みたいな、分からないことに乗っていくのがすごく楽しかったです。特に七実が幼くて、人を笑わせるということを純粋に楽しんでいた時代を撮影している時の、大九さんの生き生きとした演出はめちゃくちゃ楽しかったですね。どうなってもいいからとりあえずやろうと思って。私も面白がってもらうことは好きだから喜々としていろいろ試してしまい、そのサービス精神が行き過ぎていないか、ちょっと待って、冷静になろうという瞬間はありました」とうれしそうに振り返り、「個人的にも、関西弁でここまでしゃべりまくって、笑ってほしい、褒めてほしいっていう役もなかったので、自分のまだ開けたことない扉を開ける感じがしてすごく楽しかったです。家族を支えて困難に立ち向かっていく主人公を誰かが描くとして、ここまで変でひょうきんでポンコツで駄目だっていう、こんな角度からの主人公って大九さんだからだし、岸田さんだからだなと感じました。大九さんと七実の相性がすごくよかったんだろうなって思います」と手応え十分。