ところが、このキャンペーンに保守派が激しく反発した。歌手のキッド・ロック氏は缶入り「バドライト」を水辺に並べて、自動小銃を乱射して破壊する映像を自身のソーシャル・メディアのアカウントにアップした。ロック氏は銃を撃ち終えた後、テレビや新聞では使用できない侮辱的な表現を使い「糞バドライト、糞アンハイザー・ブッシュ。良い日を送ってくれ」と語り、キャンペーンへの嫌悪感を示した。

 また、カントリー歌手のトラビス・トリット氏は、アンハイザー・ブッシュとのパートナー契約でツアーバスに持ち込んでいた同社の製品を、ツアーバスから排除したと発表した。保守派の有名人らの対応に呼応して、保守系の一般消費者も「バドライト」をトイレに流して捨てるところをソーシャル・メディアにアップするなど、「バドライトたたき」が広がり、あっという間に不買運動につながった。

 このため「バドライト」の売り上げは急落した。ビール業界に詳しい調査会社、バンプ・ウイリアムズ・コンサルティングによると4月第3週は前年同期比で17%減、第4週は同21%減となった。飲料業界ニュースサービス会社のビール・ビジネス・デイリーによると、「バドライト」の4月単月の売り上げは同21.4%減だったという。

 アンハイザー・ブッシュは保守派による不買運動に対応するため、4月中旬にキャンペーンの内容を変更した。テレビやインターネットのCMは、同社が長年、コマーシャルなどで使用しているクライズデールと呼ばれる馬が米国各地を走る愛国的な内容に差し替えた。CMには星条旗を掲げる米国市民の姿も映し出された。