◆太郎くんの言葉のチョイスはどこから?

――「自分の気持ちは自分だけのものでいい」という言葉や、その言葉に込められた思いなど太郎くんが周りの出来事に対して深い考えを持っていることに驚きました。

まゆん:太郎の言葉は漫画やアニメからピックアップしてきたものもあると思うのですが、「すごいチョイスをするな」と思うことがあります。深く考える癖があるのか、感性なのか、私や母が教えていないのに本当に考えつかないようなことを言ってくるんです。

――普段からから、どんなことを太郎くんに伝えるようにしているのでしょうか?

まゆん:相手の立場に立つことが大事だと伝えています。自分と相手は視点が違うし、自分が当たり前じゃない。自分自身も固定観念に縛られず、フラットでいたいと思っています。

――太郎くんのことを見守って、まゆんさんに細かく伝えてくれるご両親もすごいですね。

まゆんさん:太郎のことだけでなく、甥っ子や姪っ子、猫のにゃんちゃんのこともすごく細かく教えてくれます。本当に面白いと思っていて、楽しいから教えてくれるという感じです。うちの家族は皆ポジティブというか、ちょっと陽気ですね。

◆「兄が亡くなったこと」について両親は

――本書にお兄様が亡くなられた時のエピソードが収録されていましたが、まゆんさんやご両親は今はどう受け止められているのでしょうか。

まゆん:私は受け止めていますが、父や母は兄の話は全くしません。両親の前ではあまり話題に出さないようにしているのですが、私と妹が揃うとつい兄の思い出話になってしまうんです。でもそういう時も両親は会話に入ってこないです。

テレビで若い息子さんが親より先に亡くなったニュースが流れたり、知り合いの息子さんが亡くなったという話を聞いた時は、母は目を涙でいっぱいにするので自分と重ねているんだなと思います。そこは私には分からないほど、本当に辛いのだと思います。

【まゆん】

看護師でありシングルマザー。自閉スペクトラム症で特別支援級に在籍する息子の太郎くんとの日常や、心に残った出来事を漫画にして配信している。「ウォーカープラス」「LITALICO発達ナビ」などで不定期で漫画を発表。著書に『自閉スペクトラム症の太郎とやさしい世界』(KADOKAWA)。Twitter:@mayun4311、Instagram:@mayun4311

<取材・文/都田ミツコ 漫画/まゆん>

【都田ミツコ】

ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。