『A.I.』や『2001年宇宙の旅』を連想する理由
本作のあらすじは、サーカス団で生活していたロバのイーオーが、動物虐待とされて連れ去られてしまい、さらに放浪の旅に出るというもの。サーカス団からいろいろな場所へ赴き様々な体験をする流れは童話「ピノキオ」、その「ピノキオ」をモチーフにした2001年の映画『A.I.』をも連想させた。
シンプルに「ロバのロードムービー」と言うことができるし、出会う悪人や善人へ「こういう人は現実にもいるなあ」と思わせる短い寓話の連なりでもある。しかし、それぞれのエピソードは断片的にしか語られていない。情報がかなり制限されていたり、はたまた最後まで語られず途中で「切り上げた」ような印象を持ったりするため、「今の物語の意味ってなんなんだろう?」と困惑するのだ。
その断片的な語り口は、純粋さを失わないまま人々を次々に見つめていくロバのイーオーの“視点”を表しているとも言えるだろう。説明がほぼないがゆえの難解さや、浮遊するようなカメラワークで捉えた幻想的な光景など、作風はかなり1968年の『2001年宇宙の旅』に近いところがある。
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