なぜか「ロバ映画」ラッシュが起きている。何しろ、第95回アカデミー賞に7部門8ノミネートされた『イニシェリン島の精霊』ではロバが重要な役回りとなっており、そのため授賞式にロバが登壇した。さらに、アカデミー賞3部門ノミネートの『逆転のトライアングル』でも、長編ドキュメンタリー映画賞を受賞した『ナワリヌイ』にも劇中にロバが出てきたのだ。

 そして、2023年5月5日より公開されている、ポーランド・イタリア合作の映画『EO イーオー』は、ロバを主役に迎えているのでロバ映画の「真打」と言ってもいいだろう。しかもアカデミー賞国際長編映画賞のノミネート作であり、やはりアカデミー賞でロバ映画が一挙に揃うシンクロニシティが起きていたのである。さらに、筆者は未見だが2023年2月より日本でも公開された中国映画『小さき麦の花』にもロバが登場していたらしい。

 その『EO イーオー』の本編は「えっ!?」「今のどういうこと?」などと良い意味で困惑できる、咀嚼が難しくあるがゆえの不思議な魅力を持つ作品だった。具体的な特徴を紹介しよう。