◆「ひどすぎて笑ってしまう」ダークコメディでもある理由

©️2023「ヴィレッジ」製作委員会
 誤解を恐れずに言うのであれば、本作は「ひどすぎて笑ってしまう」ダークコメディの要素も持ち合わせているとも思う。描かれているのは閉鎖的な村社会における、巨大な権力者からの搾取や同調圧力の問題であり、それは極端なようでいて「確かに現実にもあることだからゾッとする」と同時に「悪い冗談にしか思えなくて笑ってしまう」領域にまで達しているからだ。

 その恐ろしく黒い笑いは、横浜流星の演技にも反映されているのではないか。何しろ、横浜流星は「すべてをラストの感情に持っていくため」に、藤井道人監督と話し合いながら表情を作っていき、「もう少し、笑みを2割増し、悲しみは引いて」というオーダーも受けたのだから。そこで横浜流星は「心は泣いているのに、笑っていなきゃいけない」「悲しい表情なのに、心は笑っている」といった矛盾した心境に至っていたそうだが、それでも監督を信じてやり切ったのだという。