◆トイレ利用の実情を知ってほしい

やっとの想いで、かねてから切望していた男性ホルモン投与をはじめ、見た目や声が男性化していった。けれどいまのところ、戸籍を変更するつもりはない。現在の日本では、戸籍の性別を変更するには厳しい要件をクリアしなければならない。

しかしーー社会でどう生きていくのかを突き詰めていくと、戸籍変更は視野に入ることがある。

男性になれば、履歴書や身分証明で引っかかることもないし、初対面の相手に「セクシャルマイノリティとは」「私のアイデンティティとは」と解説をしなくて済む。最初からずっと男性だった顔ができたら楽かな、とは思う。

トイレ
家族以外でも、毎日顔を合わせている人は意外と変化に気づかないものだ。だから、ホルモン治療をする前の人が多い職場では女子トイレを、まったく知らない人ばかりの場では男子トイレを使う。それでも、人がいない時間帯を狙ったり人の気配がいなくなるまで個室で待ったり、周りの人が困惑しないように気をつけている。