前後編に分けられたこその「飢餓感」

 本作で賛否を呼ぶポイントがあるとすれば、やはり前後編に分けられていることだろう。前編も後編も上映時間は90分台で、片方だけではボリュームはやや少なくも思えてしまう。

 とはいえ、謎の多い「運命」につながる(または変えていく)過程をたっぷり見せる前編と、様々な登場人物の想いがタイトル通り「決戦」で爆発する後編に分ける構成にはスジが通っている。探偵もので例えるなら、前編を「事件編」、後編を「解決編」と捉えることもできるだろう。

 何より、前後編合わせて3時間のボリュームでこそ描ける物語そのものに見入った。筆者は映画の後に原作を読んでみたが、エピソードを再構成しつつも、重要な要素を外さない、エモーショナルに盛り上げるための脚本の工夫にも感服した。原作漫画のファンにとっては期待通りか、キャスト陣の熱演もあってそれ以上のものが観られるだろうし、筆者個人は「物語のどこにも削る場面はない」「3時間は必要だった」と思えたのだから。

 長尺の映画を観ることをためらってしまう若い観客がいることを踏まえても、この前後編に分けたことは英断だったと思う。また、筆者は生意気にも試写で前後編を一気に観てしまったが、これはむしろもったいなかった。約2カ月が空いて、やっと公開される後編を観られるという、その良い意味での待ち遠しさ、言い換えれば「飢餓感」は、映像作品が溢れている今ではむしろ貴重だと思えたのだから。