映画『ボヘミアン・ラプソディ』はクイーンを知ってる世代には知らない世代ともどもの心に突き刺さった一本だ。クイーンの音楽は単なる懐メロではなく、今聞いても新しさを感じられる。タイトルバックの「ボヘミアン・ラプソディ」は当時はもちろん、現在でも強烈なインパクトがある。ブライアン・メイが「観客に歌わせるんだ」と「ウィ・ウィル・ロック・ユー」で観客が足踏みしてサビの部分をバンドに向けて絶唱するシーンの興奮よ!
クイーンの伝説をリアルタイムで経験していない世代にも、このバンドがいかに伝説なのかがわかりやすく伝わるようになっているのが良いですね。
その「わかりやすさ」を重要視した半面、ストーリー展開は「どこかで見た」ような既視感に溢れている。あらゆる成功を手にしながら、心は満たされず、病に苦しんでいる主人公像というのはあまりに凡庸で、フレディをそんなどこにでもあるような悲劇の主人公として扱っていいのか? という点で本作は、批判を受けている。
また、事実とはかけ離れた物語になっている。最初のバンドにフレディが加入するときの経緯や、フレディのソロ契約をきっかけに仲違いし、クイーンがほぼ解散状態になったり、ライブエイド出演を決定するまでメンバーが何年も口を聞いていなかったかのような様子や、出演前にフレディがHIV感染者であることを知っていた、というのは映画の演出であって事実とは異なる。
【こちらの記事も読まれています】