ドラマを見ていて思い出したのは、昨年から今年にかけて注目された2人のリーダー、サッカー日本代表の森保一監督と、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で侍ジャパンを率いた栗山英樹監督。2人とも強いリーダーシップでチームを自分色に染めるタイプではない。選手を信じ、彼らに敬意をもって接することで、求心力を高め大きな勝利をつかんだ。これまでの日本のリーダー像を塗り替えるような出来事だった。

 それがまさに「どうする家康」のスタートとシンクロしたというのが、また面白い。「どうする家康」が描いているのは、まさにそういうリーダー像だろう。桶狭間にしろ、本能寺にしろ、自らの運命が常に歴史の転換に直結してしまう希代のカリスマ・織田信長とも、誰も信じず自分の才覚だけで天下をとったスーパーマエストロ・豊臣秀吉とも違う。仲間を信じ、家臣に愛され、「この殿のために」と皆が力を尽くすことで日本を平定に導いた家康こそが、現代に通じるヒーロー像なんだというテーマは、実にタイムリーだ。