彼の作品の大きな特徴は、物語全体を貫く一種の論理性だ。笑わせるにしても、泣かせるにしても、フワッとした不明瞭な描き方はしない。精細に構成されていながら、テンポの良さやスピード感も兼ね備えた構築力は、まさに唯一無二のテクニック。その堅固な構築力が、より自由な俳優の演技や演出を促し、作品の多様性を後押しするのだ。特に、「コンフィデンスマンJP」シリーズ(フジテレビ系)におけるトリックの多彩さ、アイデアの豊富さは驚異的で、彼の才能の埋蔵量にあらためて驚かされた。

 そんな古沢氏が23年、満を持して挑んでいる大河ドラマもすごい! いや、今年の彼は本当にすごいのだ。映画「THE LEGEND & BUTTERFLY」「映画ドラえもん のび太と空の理想郷」だけでなく、Prime Videoで配信中の「エンジェルフライト―国際霊柩送還士―」も手掛けている。どれも脚本としては2〜3年前には手を離れていたとは思うが、それにしても…。

家康に投影した「日本のリーダー像」「ヒーロー像」

 本題に戻って、放送中の大河ドラマ「どうする家康」は、日本の歴史上最も有名な成功者である徳川家康を“ナイーブで情けないプリンス”として描くという、非常に野心的な作品。そして、松本潤演じる家康が本当に臆病で情けない。見ていてちょっと気の毒になるくらい容赦ない。だがその容赦のなさこそが、古沢氏の目指す新しい大河ドラマなのだろう。丸くて動く独特のタイトルロゴや、ポップでカジュアルなタイトルバックにも、その姿勢が表れている。