◆作り手にとっても“坂口健太郎ありき”

©2023『サイド バイ サイド』製作委員
 坂口健太郎の、坂口健太郎による、坂口健太郎のための映画と言って差し支えない『サイド バイ サイド 隣にいる人』であるが、伊藤ちひろ監督本人が「純粋に坂口健太郎くんを撮ってみたいと思った」などと語っている通り、作り手にとっても“坂口健太郎ありき”だったことも間違いない。

 さらに伊藤ちひろ監督は、行定勲監督作品に脚本家として関わっており、2017年の『ナラタージュ』の時に坂口健太郎と出会って、ずっと気になっていて、「彼の今まで見たことない姿を撮ってみたい」「どういうふうに彼を撮ったら、より魅力的になるのか」と考え、今回の脚本を書いたと語っている。

 さらにさらに、「彼の整った特別で神秘的なビジュアルを生かし、彼でなければ演じられないものにしよう」「坂口くんには柔軟さや役者としての広い度量があり、どんなものができるのかはこちらに委ねてくれているところがありましたので、想像を際限なく広げることができて“未山(主人公)像”は創られていきました」とも語っている。その想いが前述してきた坂口健太郎の「美しさ」「主夫ぶり」「破壊力抜群な『おいで』」などに結実していた。