◆“秒で”「結婚してください」と願いたくなる主夫ぶり
本作の大きな見どころ、それは坂口健太郎が演じる青年を、慈しむように撮っていることだ。
彼には市川実日子演じる看護師の恋人がいて、野菜を水でやさしく洗ったり、恋人の髪を結んであげたり、恋人の幼い娘へ「四季」という言葉の意味をわかりやすく教えたり、一緒に猫をなでたりする様が丁寧に映されている。果ては、ちょっと急いでいる恋人から、濡れている手を自分の服で拭かれても、まったく怒らないどころか少し微笑んでいたりもする。
人当たりも良く親切で周りから好かれており、酪農家のおじさんから「君みたいな息子がいればなあ」と言われれば「いつでも呼んでください」と答えたりする。誰もが「結婚してください」もしくは「養子になってください」と秒で願いたくなるほどに、穏やかでやさしい青年なのだ。
そして、田舎の風景がとても美しく撮られていることに沿うように、坂口健太郎が眠っている時の顔や、ただ佇んでいる様もまた美しく撮られている。「田舎で主夫のような生活をしている坂口健太郎」が最大出力されているので、そこに期待する人には他の何を差し置いても観ていただきたい。