◆「恋人以上、友達未満」

©︎2023 劇場版「美しい彼~eternal~」製作委員会
 ひとつ屋根の下、一緒に暮らすふたりは、付き合っている。事実、恋人なのだけれど、周りからはよく「友達?」と聞かれる。ドラマ版の頃はまだ表向きには「友達……」とためらいがちに答えていたが、『美しい彼~eternal~』になると平も清居も揃って、「友達じゃない」とっはきり答える。でもそれ以上は言いよどんでしまう。別に男同士の恋愛だから秘密にしたいわけではない(そもそもそんなこと気にするのが野暮です)。でもなぜか、はっきりとは言えない。

 このもどかしさ。特に清居は、じれったく思う。平とふたりのときには何度も「彼氏」だと強く確かめようとする。平も彼氏だと認識してはいる。ふたりの間で了解があるなら、それでいいじゃんとはならない。すくなくとも筆者は、ここに本作が描く最大の不思議と美しさがあると考えている。

 ふたりが出会い、平が一方的に清居に魅せられる場面を思い出してみる。あの瞬間の平のモノローグは、こうだった。

「まるで引き潮に乗せられたみたいな感覚。引力めいたものに引きずられて、彼から目が離せない」

 原作の記述も内容はほぼ同じ。これがBLドラマ的な関係性を定義していると筆者は以前指摘したことがある。この定義をもとにふたりの関係性を熟考すると、こうなる。ふたりは、友達ではない。ただ、恋人ではある。でも、単に恋人なわけでもない。だから、「恋人以上、友達未満」じゃないかと。