主人公はSNSを使いこなすデジタルネイティブ世代

 本作の内容は「インターネットおよびSNSを駆使して行方不明の母を探す」と、まさにシンプル。前作は「100%すべてPC画面上の映像で展開していくサスペンススリラー」というキャッチーかつ挑戦的なコンセプト通りでありつつ、極めて正統派な謎解きの面白さが詰まった内容が高い評価を得ており、今回はその魅力を引き継ぎつつ、さらにスピード感が増している。

 その理由の1つが、前作の主人公が「娘を探す中年男性」だったのに対し、今回は「母を探す18歳の女性」になっていること。前作の主人公はSNSをよく知らないため、手探りで娘の足跡を追う「ぎこちなさ」もまたスリリングだったのだが、今回の主人公は打って変わってSNSを器用に使いこなす「デジタルネイティブ世代」の若者へと変わっているというわけだ。

 そのため、複数のSNSやアプリをほぼ同時並行でチェックするなんてことはお手のもの。それに伴って、今回はPCだけでなくスマホの画面が映し出される場面も多くなっている。さらには、スマホの位置情報、監視カメラ、銀行の出入金記録など、ありとあらゆる手段を講じていく。

「全てが(PCまたはスマホの)画面上で展開する」ことは謎解きに必要な情報をギュッと凝縮することに結実しているし、デジタルネイティブ世代が次々にSNSを駆使する様がリアルかつスピーディな編集の映像にそのままシンクロしている様は、それだけで面白い。

 ちなみに、今回の物語の種となったのは「母を空港で出迎える少女のイメージ」だったという。劇中で主人公は母を出迎えるボードを持つ自分の姿を、離れた場所に置いたスマホで撮っているのだが、これはTikTokに投稿するために考えたイタズラだったそうだ。もちろん母が現れないためこのイタズラは不発に終わるのだが、そうしたところでもデジタルネイティブ世代らしさが表現されているのもまた興味深い。