普通にはなれない者の悲劇

 前日譚となる本作のストーリーも担当した、原案者のアレックス・メイスは、エスターについて「決して普通にはなれないと感じている」「いつも自分を“異常者”のように感じている」などとも述べている。

 エスターは極めて知性的で、人の心を操る能力にも長けており、生き方によっては社会性を持った優秀な人物になれる可能性を見出せなくもない。だが、結果的に彼女の振る舞いは人々を互いに対立させ、自暴自棄なまでの残虐性に発展するという悲劇がある。

 エスターはほぼほぼファンタジーと言っていい邪悪な存在でもあるが、社会からこぼれ落ち、「普通にはなれない」「異常者だ」と自身の負の感情を増幅させ、その結果として犯罪や殺人にまで発展してしまうケースは現実にもたくさんある。

 うがった見方ではあると思うが、「子どもにしか見えない殺人鬼」であるエスターは、見た目だけでなく精神的にも未熟だからこそ、殺人や犯罪を犯してしまうことのメタファーとしても取れる。荒唐無稽にも思える本作のようなホラー映画から、そうした現実の問題を考えて観るのも、意義深いことであるはずだ。

『エスター ファースト・キル』
監督:ウィリアム・ブレント・ベル
脚本:デヴィッド・コッゲシャル
原案・製作総指揮:デヴィッド・レスリー・ジョンソン=マクゴールドリック
プロデューサー:アレックス・メイス/ハル・サドフ/イーサン・アーウィン
出演:イザベル・ファーマン
ジュリア・スタイルズ ロッシフ・サザーランド マシュー・アーロン・フィンラン
(アメリカ/99分/R-15/カラー/5.1ch)
配給:ハピネットファントム・スタジオ
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