「バレないように努める」サスペンスが生まれる

 この『エスター ファースト・キル』の物語は、前作の終盤でも少し言及されていた、北欧エストニアの精神科病院から始まり、エスターが残忍な殺人鬼になっていく過程……というよりも「すでに殺人鬼になっていた事実」が描かれる。そして、彼女はとある失踪した娘を持つ家族の元へ行き、容姿が似ていたその娘に「成り代わろう」とするのだ。

 前作のエスターはあくまで「養子として迎え入れられる」立場であり、その時点では何かを疑われる要素は少ない。だが、今回はエスターのほうに「失踪した娘とは別人だと家族にバレないようにしないといけない」という、さらなる難題がプラスされているというわけだ。

 失踪から4年が経って成長している(設定)とはいえ、大好きだった祖母がすでに他界していることを忘れていた(知らなかった)り、以前は興味を示さなかった絵の才能を発揮するなど、「ボロが出てしまう」要素が満載。今回は悪役である殺人鬼のエスターのほうにこそ「バレるのかバレないのか」とハラハラするサスペンスが生まれており、それが前作の二番煎じにはしないアイデアのひとつなのだ。