◆“こっそり声”を頼りに

 平良と清居、それぞれの視点から描くセパレート方式のモノローグは、先行する『おっさんずラブ』と『チェリまほ』から脈々と語り継がれてきた表現性のさらなる可能性を示した。

 では、なぜBLドラマには、モノローグが必要なのか。主人公たちの関係性を一言で表現することが難しいのがBL世界の面白さだ。そうしたBL的な関係性を目に見えるかたちで示したのが、主人公たちのモノローグだった。BLドラマ作品を代表する3作品がどれも巧みなモノローグによって作品の純度を高め、言葉にならない繊細な感情を画面の奥からふるわせた。

 モノローグは、本人以外には聞こえない。言わば、声なき声。BL世界の住人である春田、安達&黒沢や平良&清居の心の中を彼ら自身の言葉で視聴者にだけこっそりと聞かせてくれる。この“こっそり声”を頼りにBLドラマ世界のさらに奥へ奥へ分け入ることができる。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】

音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu