ソニー生命の「子どもの教育資金に関する調査」によると、子どもの学力や学歴について「教育費をいくらかけたかで決まる」と感じる方は65.5%と多数派であるようです。

Oさん(55歳、主婦)もかつてそう感じていた方の一人です。お子さん(長女23歳、長男21歳)の教育費を優先させ、ご夫婦の老後資金は後回しにしていました。ご主人(55歳、会社員)もOさんも「“何とかなる”と思っていたけれど、ちょっと不安です。大丈夫でしょうか?」というご相談です。

小学校に入学するとさらに習い事を増やした

Oさんは、ご結婚後もしばらくは共働きを続けていましたが、二人目のお子さんがお生まれになったあと、お子さんの教育に力を注ぎたいという思いから、それまで勤務していた会社を辞めることにされました。数年したら、また仕事を始めるつもりでしたし、節約すれば何とかご主人の収入だけで暮らしていけるのではと考えてのことでした。

長女さんが3歳になると幼稚園の入園準備が始まります。Oさんのご自宅から通える幼稚園は、すべて私立幼稚園でした。「環境の整った幼稚園を選びたい」と、教育方針や課外活動、預かり保育なども確認しました。幼稚園に通うには、制服代、入園金、学費、施設設備費、その他の費用がかかります。課外活動のスイミングスクールにも参加させるなど、1人につき毎月4万円かかることになりました。

小学校は公立で、学校教育費、給食費などは幼稚園に通わせていた頃よりずっと少なくて済みますが、その分習い事や塾にあてられると考えていたので、相変わらず合計で8万円かかっていました。

情操教育のためにと無計画にお金をかけた

Oさんご夫婦は、お子さんたちにはのびのびと成長してほしいと考えて、公立の小学校、中学校、高校へ進学してほしいと考えていました。小学校に入学すると、幼稚園の頃から習っているスイミングスクール、学習塾の他には、心を育てる情操教育として、長女さんにはバレエ、長男さんにはピアノを習わせることにされました。

また、家族旅行、美術館、展覧会、コンサートと時間とお金を惜しまず、お子さんたちのためにと使っていたそうです。それでも年間に30万円ほど貯蓄はできていたそうです。

妻が復職したので住宅を購入、子どもの大学進学で教育費が急増

Oさんは、長女さんが中学校に入学した頃からパートで、仕事を始められました。その頃のOさんご夫婦の家計は次の通りです。

収入
夫:月収45万円(手取り)、ボーナス100万円(手取り)
妻:月収6万円(手取り)

貯蓄:300万円

マンションを購入し、貯蓄はなくなりました。固定資産税、修繕積立費、管理費など住宅にかかる費用が増えることになります。しかしOさんの収入がありますし、お子さんたちがお生まれになったときに加入した学資保険の満期が来ると、それぞれ100万円、合計200万円を受け取れます。「夫の収入ももう少し増えるはずだから、何とかなる」と考えて、支出を改めることはなかったそうです。

その後、お子さんの受験準備の費用、二人分の私立大学の学費と、教育費の負担が増えていきました。ご夫婦は教育ローンを利用することに……。

教育費、老後資金は長期間かけてコツコツ貯めておく

現在ご主人の年収は900万円、Oさんの年収は120万円です。お二人の年金は合わせて26.3万円、ご主人の退職金は約2,000万円受け取れます。しかし、毎月10万円の住宅ローンの完済は75歳、教育ローン300万円も返済が残っています。Oさんご夫婦は、60歳以降も働くことを検討されていらっしゃるそうですが、60歳以降は収入が下がる場合もありますから、できるだけ多くの貯蓄を60歳までにされるようお伝えしました。

ソニー生命の調査では、「老後の備えより子どもの教育費にお金を回したい」と答える方は63.8%ですが、教育費がかかる時期と並行して老後資金も貯めなければ、定年まぎわで苦しい思いをすることになってしまいます。お子さんお一人にかけられる教育費を見積もり、計画的に準備し、老後資金も早めに準備しておきましょう。

 
文・藤原洋子
所属・FP dream代表
生命保険会社で営業職を経験し、AFP資格を取得。現在は、独立系ファイナンシャル・プランナーとして、執筆、相談、セミナーを通して活動しています。

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