――米国時代から親交のあった岩井俊二監督が、ハナの通う高校の教師役で出演しています。
紀里谷 岩井さんにはいつも脚本ができた段階で、いちばん最初に読んでもらっているんです。今回の脚本はすごく褒めてもらいました。キャスティングしたばかりだった毎熊くんも呼んで、岩井さんと3人で食事をしたんですが、岩井さんの『リップヴァンウィンクルの花嫁』(16)に僕は役者として出ているのに、岩井さんはまだ僕の作品には出ていない。これはフェアじゃないと言ったんです。それで岩井さん「分かった」と言って、教師役で出ることを了承してくれた(笑)。僕と岩井さんは、撮っている作品はまったく異なるけど、映画に対する核になる考え方は通じるものがあるんです。現場には無駄な人間はいないほうがいいとか、考え方が似ているんです。作風に関しては岩井さんは印象派、僕は表現主義といったところでしょうね。
――本作のテーマについて、より深くお聞きしたいと思います。女子高生のハナは、夢の世界で自分よりも非力な幼い女の子・ユキ(増田光桜)と出会い、ユキを傷つけようとするものたちから救おうとする。幼いユキはハナの心の中にいる存在であり、そのハナは紀里谷監督の心の中にいる存在でもある。そして、この映画を観ている観客たちの心の中にも、それぞれ女の子は存在している。一人ひとりが自分の心の中にいる女の子を救うことができれば、世界を救うことにもなる――。そのように解釈したんですが……。
紀里谷 その解釈は正しいです。まぁ、ネタバレになってしまいますが、自分自身を救わなくちゃいけないということです。自分を見つめ、自分を赦し、自分を好きになって、自分を愛してあげようという話なんです。自分の心の中に別人がいて、その人のことを自分が認めてあげようという話は、小説『地平線を追いかけて満員電車を降りてみた』(文響社)にも一度書いたことがあります。