――主人公のハナがひとりぼっちで、世界に絶望している姿は、紀里谷監督自身の心情が投影されているようですね。

紀里谷 そうです。それに僕と同じように、みんなも感じていることだと思います。日本人って、ずっと裏切られ続けてきた国民だと思うんですよ。

――裏切られて続けてきた国民ですか?

紀里谷 これまでずっと頑張って、いい大学に入るために受験勉強して、いざ卒業してみると就職氷河期でどこにも就職することができなかった。政治家たちは次々と変わり、公約が守られることはありません。マスメディアは公平だと言いながら、公平ではない。あらゆるものから裏切られ続けているんです。僕も日本のことを想い続けて、この20年間頑張ってきたけれど、結局は嫌われてしまった。僕だけじゃなくて、多くの人が感じていることだと思います。

――いくら努力しても報われず、多くの日本人が疲弊しているのは確かです。

紀里谷 努力という言葉、今の時代はタブーでしょう。根性という言葉は、ブラックワードになってしまった。情熱という言葉も消えてしまった。情熱を持って何かをやり遂げるということが、今の社会では「悪」になってしまった。もてはやされているのは懐古主義だけになってしまい、未来に向かって物づくりがされていない。こういうことを言うから、また僕は嫌われてしまう(苦笑)。