重いファットスーツを着てこそのリアリズム

 舞台がずっと同じ場所なのに飽きさせない理由のひとつは、やはり巨漢の男のビジュアルにもある。ブヨブヨの肉体もさることながら、歩くどころか立ち上がるだけでも困難な様が「本物」としか思えなかったのだから。

 ブレンダン・フレイザーは毎日メーキャップに4時間を費やし、45キロのファットスーツを着用して40日間の撮影に臨んだ。F1ドライバーのクールスーツに使われているような冷却システムが内蔵されていたものの、非常に暑いことに変わりはなかったらしい。

 さらに、フレイザーの表情が見えづらくなることを避けるため、本作のために史上初の100%デジタル技術によるメーキャップも開発。デジタルとアナログの両方を組み合わせての革新的な技術が用いられているのだ。

 また、フレイザー自身「心理的な重さも重要だった」「何をするにもものすごい努力が必要な状態では、ひとつひとつの選択がより重要に感じられる」とも語っている。重いファットスーツを着ての俳優としてのチャレンジが、そのまま演じる役柄にも一致している。それでこそのリアリズムを作り出しているのだ。