ミニマムな舞台ながら濃厚なドラマ

 本作の内容は、「余命わずかな体重272キロの孤独な男が、疎遠だった娘との関係修復を切望する最期の5日間を描く」というもの。ほぼ全編が家の中のワンシチュエーションものでもあり、主要登場人物はわずか5人。極めてミニマムな内容でありながらも(だからこその)濃厚な人間ドラマが紡がれていることが最大の魅力だ。

 主人公のみならず、それぞれが簡単には解決できない悩みを抱えており、対話をして少しずつ分かりあうこともあれば、逆に怒りを募らせることもある。主人公の過去が徐々に明らかになっていく構成や、ネタバレ厳禁の「秘密」があることも実に巧みで、舞台がずっと同じ場所でありながらも、グイグイと惹き込まれる物語の吸引力があるのだ。