◆さえない日常感を見事に表現

©2023「ひとりぼっちじゃない」製作委員会
 アーティストが俳優になったら、全員が全員、ガガや井口のようになるわけではない。例えば、福山雅治の場合、「ガリレオ」シリーズに顕著なようにアーティストとしても俳優としてもカリスマ性を強く押し出している。福山のイメージにはかっこよさが絶対に必要だ。

 逆に井口は、徹底的にカリスマ性を感じられないように心がけている。井口が演じる歯科医師・ススメは、陰気な性格で、人とあまりうまくコミュニケーションが取れない。映画冒頭からとにかくさえない印象を与え続ける。

 ススメが勤めるクリニックの院長からも看護師からも全然相手にされず、帰りに立ち寄る中華屋では水のお代わりすらもらえない。横柄な態度の店員に気圧されて、空のコップをテーブルの隅っこに置き、注いでくれサインを出すのがやっと。このさえない主人公の日常を井口は見事に表現している。