2023年3月12日、東京・LIQUIDROOMにてSANABAGUN.の結成10周年を記念するイベント『SANABAGUN. SUPER ULTRA DYNAMITE PANTIE DESIRE, MARVELOUS MAXIMUM SACRIFICE 10 YEARS DRAGON FESTIVAL』が開催された。
略して『SNB.SUDPDMMS10YDF』は2部構成で行われ、1部はサナバの楽器隊がハウスバンドとなり彼らがこの10年で交流を重ねてきたHUNGER(GAGLE)、小出祐介(Base Ball Bear)、Pecori(ODD Foot Works)、Ryohu、YONCE(Suchmos)というゲストボーカルたちをフィーチャー。そして、2部ではサナバのこれまでと今を凝縮するかのように濃密なワンマンショーが繰り広げられ、シークレットゲストとして木村カエラも登場した。
実に3時間。掛け値なしのフルハウス、さらにオーディエンスの“声出しあり”という絶好の状況の中でLIQUIDROOMに充満する熱は徹頭徹尾上がりっぱなしだった。ここに本イベントの総括的なライブレポートをお届けする。
この日、僭越ながらMCとしてステージに立たせてもらった筆者がライブを思い出しながらまず浮かぶのは、こんなに至近距離の親しみが込められた愛情を向けられているバンドは本当に稀有だということ。それはゲストアーティストとの一回性のスペシャル感に富んだパフォーマンスからも、「SNB.SUDPDMMS10YDF」のお祝いタイトルコール映像に登場した盟友ミュージシャンたちの顔ぶれからも、そしてやっと堂々と解放することができたオーディエンスたちの大きな歓声のエネルギーからも、まざまざと感じた。
2013年2月に高岩遼が発起人となってメンバーを集め、池袋デニーズでSANABAGUN.というバンド名が決定してから10年。この10年、いくつかの絶対に忘れない出会いと別れを繰り返しながら、高岩遼(Vo.)、岩間俊樹(MC)、磯貝一樹(Gt.)、澤村一平(Ds)、谷本大河(Sax.)、髙橋紘一(Tp.)、大林亮三(Ba.)、大樋祐大(Key.)の8人が今のSANABAGUN.として威風堂々と存在している。
付け加えるならば、サナバは最初からずっとチャーミングなバンドである。その外見とパフォーマンス力は一見近寄りがたいのに、目の前で向き合うと思わず相好を崩してしまうほど愛らしい。どれほどバンドに危機的状況が訪れようと、やっぱりサナバを追いかけたい、サナバをあきらめたくないと思わせるチャームを彼らは持ち続けた。何より、サナバはバンドとして絶対に折れなかった。SNSを動かし続けなければ息を止めているようにさえ扱われるこの奇妙な時代にあって、生音のすごみを込める音源を作り続け、生身の代えがたい迫力を放つライブを重ねた。だからこそ、この日、LIQUIDROOMにはこんなにも素晴らしい光景が生まれたのだ。
オープニングナンバーの「Son of a Gun Theme」を経て、一発目のゲストボーカルとしてステージに現れたRyohu。この数日前に日本武道館でKANDYTOWNを終焉させたばかりの彼は「Call Your Name」と「Forever」を情感豊かなメロウネスをもって体現し、続く「One Way」でYONCEを呼び込み腰にくるグルーヴィーなSNB.バンドのアンサンブルの中でふたりはクールでありながら自由闊達な様相でマイクを交わした。
そのYONCEはなんとサザンオールスターズの「いとしのエリー」をカバー。どこまでもヒューマニスティックでソウルフルと呼ぶにふさわしいYONCEのボーカルの響きにオーディエンスは深く聴き入った。