惨劇が起きた街から離れられない人たち
イリノイ州にある小さな街・ハドンフォールドが『ハロウィン』シリーズの舞台だ。恐ろしい目にさんざん遭いながらも、ローリーはこの街から離れることができずにいる。マイケル・マイヤーズもまた、生まれ故郷であるハドンフォールドにこだわり続けている。悲しい事件が起きた土地から離れることができずにいる人たちが描かれている点も興味深い。
デヴィッド「やはり、生まれ育った場所は落ち着くし、毎日のルーティーンが決まっているから、簡単には離れられないもの。生活の拠点になっているわけで、そこでの暮らしが自分にとってのアイデンティティーにもなっている。若いアリソンは、祖母であるローリーをひとりぼっちにすることはできないという責任感もあって、街から離れることに抵抗を感じているんだ。でも、これ以上ハドンフィールドという街に暮らし続けることも問題だと考えるようになる。ひとりの人間は、いつか責任や周囲の期待から解き放たれて、自由を得る必要があると僕は考えているんだ。ハドンフィールドで暮らす人たちにとっては、街自体が一種の“錨(いかり)”のようになっている。でも、今回はマイケル・マイヤーズの物語に決着がつくことで、“錨”が上げられることになるんだ。登場キャラクターたちは新しいアイデンティティーを求めて、過去の記憶から旅立つんじゃないかな」
新三部作でローリーたちを見守ってきた保安官補のフランク(ウィル・パットン)が、いい味を出している。彼もまたマイケル・マイヤーズによって同僚を死なせてしまったという悲しい過去を持っているが、ローリーに対し「日本に桜を見にいくんだ」「一緒に行かないか」と優しい言葉を投げ掛ける。ホラー映画にあって、心なごむシーンだ。
デヴィッド「桜の花は美しく、そして散り、また翌年には花を咲かせる。心の傷を抱える人たちを描く『ハロウィン THE END』の脚本を書く上で、桜の花はとてもシンボリックなものになるなと思って、あの台詞を考えたんだ。子どもの頃の僕はテキサス州の田舎町で過ごしていたので、アジア文化に触れる機会はほとんどなかったけど、大学に進学してから多くのアジア映画を観るようになり、いろんな日本映画も観たよ。僕の双子の息子たちは日本のアニメーションが大好き。今年の桜の季節には、親子で日本を旅行することにしているんだ(笑)」