ブリトニー・スピアーズの成年後見人問題を取り上げた『The Battle for Britney』などでも知られるジャーナリストのモビーン・アザー氏が取材者となり、日本のアートを紹介するBBCの番組『The Art of Japanese Life』などのメグミ・インマン氏が監督・プロデュースを務めた。ドキュメンタリーに登場する元ジャニーズJr.の平本淳也によれば、5年ほど前から進められていた企画のようだ。日本での取材・撮影は昨夏行われている。
『J-POPの捕食者』は主に「週刊文春」(文藝春秋社)が過去に展開したジャニ―氏追及キャンペーンの記事と、その後のジャニーズ事務所との裁判を「元ネタ」とし、「文春」の記者や、当時の「文春」側の弁護士などに話を聞いていく。そして後半では、元ジャニーズの面々に取材をし、彼らが疑惑を認めながらもジャニ―氏をいまだ慕っているような様子を映し出し、グルーミング(被害者と信頼関係を結ぶことで加害者が性的虐待を行うのを受け入れさせる洗脳的行為)ではないかと訴えている。日本での放送後には、本編では放送尺の都合上収まらなかった、性的虐待の被害を受けた男性を専門に支援するセラピストにグルーミングについて解説してもらった内容の記事がBBCジャパンで公開されている。
〈グルーミングとは……性的被害専門のセラピストに聞く ジャニーズ事務所取材のBBC記者〉
ジャニ―氏に関する疑惑や、ジャニーズ事務所と関係の近いメディアが沈黙を保っていることなどは、すでに知られたことではある。ゆえにドキュメンタリーとしては、“被害者”たちの証言部分が重要な要素といえるだろう。元「They武道」の高橋竜や、元関西ジャニーズJr.の吉岡廉も顔出しで取材に応じており、2012年退所の高橋、2019年退所の吉岡がそれぞれジャニ―氏がジャニーズJr.たちに“手を出している”ことを認めたことは、1999年の「文春」報道後も性加害が続いていたということであり、視聴者の中には衝撃を受けた人も少なくないようだ。また、仮名で取材を受けたハヤシ氏は、被害について話が及ぶと言葉を詰まらせるという、心が痛む場面もあった。