今期ガッカリドラマ、最終的な1位は『100万回 言えばよかった』

 そして今期の「ガッカリドラマ」、最終回まで観た結論としては『100万回 言えばよかった』を最終的なガッカリ1位として挙げる。決してつまらなかったわけではない。むしろ、中盤まではかなりおもしろく観たし、「ドラマ序盤ランキング」でも期待のドラマ2位に選んだ。「ガッカリ1位」とするのは、期待度が高かったぶん、それだけ残念な部分が強く感じられたということだ。

 このドラマを毎週ワクワクして観ていた人の大半が、直木はなぜ殺され、何に巻き込まれたのか、というミステリー/サスペンス要素に引き込まれていただろう。しかし、おそらくそもそも、そこを引きにするつもりはなかったのではないか。脚本の安達奈緒子氏はその手の作風を(特にオリジナル作品で)得意としているわけではないし、一連の事件の部分について、ツッコミどころが多いのだ。武藤千代は少女たちに「仕事」をさせていたが、自宅に囲っている様子はなく、外部に漏れてはいけない「仕事」をさせているわりにはリスク管理が随分甘そうに見えたし、池澤英介は直木に睡眠薬を飲ませて眠らせたが、直木は子どもの前で寝てしまったわけで、直木の遺体が発見された時点で警察は失踪当日の直木の行動を調べただろうに、なぜその証言が出てこなかったのか……など、気になるポイントはいくつもある。が、そこは別にいい。「切なくて温かいファンタジーラブストーリー」と謳っている本作において、ミステリー/サスペンス要素はおそらく添え物なのだろうから。

 ガッカリしたのは、結局、1990年の映画『ゴースト/ニューヨークの幻』の焼き直しというところから脱することがなかったためだ。往年の大ヒット映画に設定が似ていることは制作側も理解していただろうから、『ゴースト』とは違う展開になるだろうと思っていたし、その鍵となるのが『100万回生きたねこ』なのだろうと思っていた。しかし、「男女カップルのうちの男性が突然殺され、幽霊になる」「幽霊の声を聞くことができる霊媒師の協力を得る」「身近な同僚が実は悪事に手を染めており、殺人に関わっていた」「他の幽霊に物の動かし方を教わる」「犯人側の同僚が怪奇現象を目にする」「幽霊が霊媒師の体を借りる」「幽霊になった男性が恋人女性との最後の別れの時に、初めて愛していると言う」など、細部は違えども大筋は『ゴースト』と大差なく、『ゴースト』を現代日本を舞台にリメイクし、薄く引き伸ばして連ドラ化したようにも感じられた。