今川氏真という役に、俳優としての溝端さんが完全にシンクロし、氏真として生ききっている感がありました。また、そんな氏真を変わらず兄として慕っているという、家康役の松本潤さんの演技もとてもよかったと思います。放送前は、「今年の大河は『気弱なプリンス』として家康を描くといわれても、松本さんは美しすぎて、家康にしては少々線が細いかも……」などと思っていたのですが、松本さんにしかできない家康の像がここのところ毎回のように提示されているような気がします。

 第13回は、織田信長(岡田准一さん)が足利義昭(古田新太さん)を奉じ、妹婿の浅井長政(大貫勇輔さん)や家康と共に上洛に成功するという話が中心になりそうです。

 しかし、最後の室町将軍と、最初の徳川将軍の出会いが永禄11年(1568年)にあったとするのはドラマの虛構です。実際の家康は、第12回のラストでも描かれたように武田信玄との関係が急速に悪化したため、本国・三河から離れられず、自身の名代として松平信一(まつだいら・のぶかず)を送っただけだったといわれています。

 次回予告に一瞬映っただけにもかかわらず、白塗りの化粧で「違うだろ、松平!」と家康を一喝する義昭に早くも話題が集まっていましたが、『どうする家康』では義昭=徹底的に世俗的な愚物として描かれそうです。第13回のあらすじには「義昭に謁見した家康は、将軍の器とは思えないその愚かな振る舞いに戸惑う」とあり、武家の棟梁たるべき将軍・足利義昭の実像に、家康は失望してしまうようですね。