帽子屋に戻ったソフィーは“荒地の魔女”の訪問を受ける。彼女はハウルを追いかけていた者の正体で、その目的はハウルの心臓。荒地の魔女はソフィーに呪いをかけ、彼女を90歳の老婆の姿に変えてしまった! 帽子屋にいられなくなったソフィーは町を出て、末の妹に会いに行く途中でハウルが住む「動く城」を見かけ、掃除婦として城に居座る。

 ここまでの冒頭の展開は完璧だ。

 ヒロインの性格や立ち位置がわかり、主人公・ハウルのミステリアスな魅力が描かれ、宮崎駿お得意の「浮遊感」を感じられる魔法の飛行シーン、対立する敵として荒地の魔女の不気味な存在感を際立たせ、タイトルバックでもある『ハウルの動く城』の歪な造形。これから一体どんな物語が起こるのだろうと観客の期待は煽るだけ煽られる、もう一度いうが完璧な開幕だ。

 ところが物語はこのあと、どんどん「わからなく」なっていき、動く城に霧のような靄がかかって見えにくくなるように、もやもやが解消されずに進んでゆく。わからなくなっていく理由として考えられるのが、ハウルという主人公の行動原理がはっきりしないことだ。