なぜなら、サックスを馬場智章、ピアノ演奏を上原ひろみ、ドラムを石若駿と、超一流のジャズ奏者が演奏を担当しており、それぞれがキャラクターの成長や感情に合わせた演奏を心がけていたからだ。特に石若駿は担当する玉田というキャラクターが初心者だからこその「あえて下手な」プレイを序盤にしており、だからこそ玉田がその後に「内面も演奏も成長していく」ことへの感動がある。

 そして、演奏シーンでのアニメならではの演出、ダイナミックな構図も大きな感動へとつながっている。本作は全体の4分の1程度が演奏シーンを占めており、それぞれが実写では不可能な、アニメならではの現実からの「拡張」がされているのだ。演奏との相乗効果で、門外漢こそが「ジャズ、すげぇ…!」と感動できるのではないか。

 その感動は、音響が優れ、集中できる、いや「生のライブを観ている」感覚になれる、映画館で観てこそ。さらに、山田裕貴、間宮祥太朗、岡山天音、それぞれの声の演技も文句のつけようがなく、特に声を荒げる場面での感情の「揺らぎ」も聴き入って欲しい。