その口コミの影響は大きく、興行収入ランキングは1週目は8位、2週目は9位だったものの、3週目では6位へと大幅にアップし、4週目でも6位をキープ。リピーターも多く、サウンドトラックがiTunesでのアルバムランキング1位を獲得、劇場ではサントラCDの売り切れも続出。3月9日には観客動員数35万人突破を記念した本編映像も公開されている。

 3週目で興行収入ランキングが大きくアップする例は、『RRR』や『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』など、ごく限られている。『アイの歌声を聴かせて』や『ハケンアニメ!』など公開直後は動員に苦戦した映画も、3週目で満席に近い劇場が相次ぐほどの人気を得た。「口コミの効果が明確に表れるまでは2週間かかる」が、それをもって「作品の力を証明した」とも言えるだろう。

 そして、『BLUE GIANT』は観る人を選ばない。後述する理由で、題材となるジャズをまったく知らない人にこそおすすめできるし、物語上で難しいところはないので老若男女が楽しめる。そして、映画館で観てこその「凄まじい映画体験」がある。決定的なネタバレにならない範囲で、その理由を記していこう。