喪失感を抱えながら日々を歩む覚悟を決めつつあった悠依の前にある朝、目の前に現れたのは、いなくなったはずの直木。それも幽霊ではなく、ちゃんと実体があった。「これは、何?」と問う悠依に、直木も「最後の時間?」と首をかしげる。「明日なくしてしまうかもしれない、何気ない幸せを 私たちは生きてた」という悠依のモノローグで、本当に最後の1日がはじまった。

 感傷的になっている時間がもったいないという悠依は仕事を休む。まずふたりがしたことは、魚住に会うことだった。突然連絡してきた悠依に、「どうしました? 何かありました?」「不安ですか? つらいですか? 僕、何しましょうか?」と心配でたまらない魚住。そこにサプライズで直木が現れる。「成仏できなかったの?」と反応する魚住だが、悠依が直木に抱きついたのを見て驚愕。そして直木の復活を心から喜び、ふたりの仲睦まじい様子に「いや~ずっと見てた~い」と目尻を下げて笑った。

 仕事のある魚住とは夜にまた会おうと約束し、ふたりはデートに出かける。ショッピングをして直木の選んだ服に着替え、いつもの道を手を繋いで歩く。そこで直木は、ずっと聞きたかった悠依の両親の話を聞くことができた。悠依が生まれたころに両親が離婚し、母親の再婚相手とのトラブルで里子となったものの、今も母親との関係は良好だという悠依。直木は安心する一方で、自分の家族が気がかりだった。「今さらもう会えないしな」と言う直木に、悠依は直木の家族を家に招きたいと提案する。

 かつて弟の拓海が骨髄移植が必要な病気になって、直木の母親は拓海のことにかかりきりとなり、鳥野家は崩壊寸前だったが、直木が自ら里子に出ると言い出したことで拓海と両親の関係はかろうじて保たれた。両親に対して複雑な感情を抱く直木。悠依は直木直伝のハンバーグを直木の両親にふるまい、直木はその様子をそっと陰から覗いていた。直木の母が「作ってくれたんです、直木。小学校5年生? 拓海のことで、私がもう、何もできなくなっていたとき」と振り返り始めたのをきっかけに、両親は直木の優しさと強さをたたえ、これまで言葉にできなかった後悔を口にする。「あの子が生まれたとき、本当に嬉しかった。絶対大事にするって思った。なんで忘れちゃったんだろう」「美味しいよ。ごめんなさい」とすすり泣く両親を、直木は静かに見送った。