◆東出昌大にとっての“巡礼の旅”
こうした東出の神々しさは、映画の画面上だからこそ感じるものなのかもしれない。というのもこの文章の冒頭で『寝ても覚めても』にふれたのは、同作が出品されたカンヌ国際映画祭で東出があるスキャンダルを世間に提供することになったからだ。その騒動によって東出は公私ともに窮地に立たされることになったわけだが、そうした世間(俗)からのバッシングとは裏腹に、映画の画面上ではむしろ眩い存在になる。
もちろん今さら過去の騒動を蒸し返したいわけではない。一度は“俗”にまみれたからこそ、東出は俳優として神がかることができたのだと考えるとどうだろう。今回、松本監督は東出をまるで“聖地”へと踏み込ませた。
結末にふれるので詳述はさけるが、東出が本作で最後に登場する場面では、引きの画ではなく、寄りの画(クロースアップ)が採用されている。大好きな飛行機に視線をやり、空を仰ぎ見る表情は、引きから寄りへうまく転換されることで、東出昌大にとっての“巡礼の旅”となったのだ。
<文/加賀谷健>
【加賀谷健】
音楽プロダクションで企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆している。ジャンルを問わない雑食性を活かして「BANGER!!!」他寄稿中。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu