◆そこにいるだけで画になる才能

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 筆者が美術応援スタッフとして参加した黒沢清監督作『クリーピー 偽りの隣人』(2016年)でもまた東出はつかみどころのない感じの刑事を演じていた。同作の主演俳優である西島秀俊は、長身であるはずなのに東出の前ではトム・クルーズくらいの背丈にしか見えない縮こまり方だった。モデル体型の東出は、でくの坊のように映りながらも、やはりただそこにいるだけで画になってしまう。

 そこにいるだけで画になってしまうのはそれだけで才能だ。濱口監督や黒沢監督のように松本監督も東出を自分の作品に思わず出したくなったのだろう。画になる東出に強い関心を持ち、彼の素晴らしさを最大限引き出すために引きの画を選択した演出の妙を感じる。

 壇の働きによって拘置所を出られた金子は、つかの間の憩いとして小さい頃から好きだった飛行機の写真を撮りに出かける。夕日の空を飛ぶ飛行機を熱心に見つめ、カシャカシャと丹念にシャッターを切る。高層マンションが屹立する隙間からのぞく夕日の方へ金子がゆっくり歩いていく。それがちょうど引きの画となり、夕景に浮かぶ東出の後ろ姿が神々しく浮かぶ。