◆引きの画の中に息づく存在感
「向かいあうこともなく二人の男女が並び立つラスト・ショットの途方もない美しさ。
しかも、ここには、二十一世紀の世界映画史でもっとも美しいロングショットさえ含まれている。(後略)」
これは、映画評論家の蓮實重彦氏が濱口竜介監督作『寝ても覚めても』に寄せたコメントである。ロングショットとは映画の撮影用語で、引きの画のこと。同作の引きの画は、草むらが半分以上を占める画面の中、一組の男女が住宅地へ向かって走っていく大ロングだった。走る男女の男のほうを演じていたのが東出昌大だったことも深く記憶に残るワンショット。
「ヨウジヤマモト」などのモデルとしてパリコレ経験もあり、189センチの大長身を誇る東出がこの引きの画の中では、豆粒くらいにしか見えない。でもそれがかえって東出昌大を画面上で息づかせ、存在感を際立たせる。またこんな引きの画の中で東出のことを見られないかな。なんて期待していると、松本優作監督作『Winny』で早くもそれが叶うとは。