◆つかみどころがなく、とらえどころのない俳優

©2023映画「Winny」製作委員会
『Winny』は、ファイル共有ソフト「Winny」の開発者が不当な逮捕にあい、開発者としての貴重な月日が権力によって奪われた実話だ。「Winny」を開発し、著作権侵害をまん延させたという名目で逮捕、そして起訴された金子勇を東出が演じている。

 映画冒頭、キーボードを打ち込む音が黒み画面に響く。狭く、暗いアパートの一室で大きな身体を縮こまらせてパソコンの画面に向かう東出が、とにかくいい。はじめ参考人として警察が自宅捜査で踏み込んでくる場面では、寝ぼけた様子で腕を組み、なんとなく捜査に協力する。このなんとなく感が自然でもあり不自然でもあるような、ないような。

 弁護士、壇俊光(三浦貴大)が中心人物となり結成された弁護団のひとりが拘置所での面会あと、金子の印象を「つかみどころのない感じ」だと表現していた。そうそうまさにそれだ。つかみどころがなく、とらえどころがない。なのに、なぜか不思議と存在感はある。これが東出昌大の俳優としての最大の特徴だと思う。