はたから見ると年収が高くて裕福そうに見えていても、実は家計がカツカツになっていて、まったく余裕がないというケースは少なからず存在します。今回は、子どものことを思うあまり、教育費の負担が重くなりすぎてしまった事例をご紹介します。

中学受験、そして中高一貫の私立校の学費を工面

Kさん(43) 会社員    手取り年収950万円
妻(41)   専業主婦
長男     中学1年生
長女     小学4年生

 

Kさん一家は、妻のたっての希望で長男の中学受験をすることに決めました。子どもにできる限りいい環境で学んでほしいという親心です。

受験対策のための塾に小4から通い、年間約120万円×3年で360万円かかりましたが、努力の甲斐あって中高一貫の私立校に入学できました。ここでの学費は年間約150万円、兄妹それぞれの習い事費用もあわせると、Kさん一家の教育費はトータルで240万円にのぼります。

Kさんの年収で、20%以上が教育費というのは一般的には高い比率です。長男に続いて長女も私立中学に進学するとなるとさらに負担は増すでしょう。中学、高校、大学と、まだあと10年近く同様の出費が続くことも十分考えられます。

「私立高校の実質無償化」というニュースもありましたが、Kさんの年収では、就学支援金や授業料軽減助成金など学費の負担を軽くするための制度の対象から外れてしまいます。

老後資金不足!よかれと思って取り組んだことが裏目に

子どものために一生懸命働いて、お金を出して、理想的な環境を作ろうと努力しているKさん夫妻ですが、そのぶん教育費が高額になってしまい、家計を圧迫している状況でした。

貯金額は300万円、毎月の貯金額は2万円と年収に対して少なめです。月2万円を20年貯めると480万円、今の貯金とあわせれば780万円になります。

子ども達が独立したらもっと貯金に回せるようになるかもしれません。しかし、そのころにはKさんはいわゆる「役職定年」を迎える年齢に近く、年収が数百万単位で落ちる可能性もあります。また、Kさんは一度転職していて今の会社での勤続年数はそう長くないため、退職金もそこまで期待できません。

夫婦の年金が月25万円もらえると考えても、このままの貯金ペースでは、人生の後半でお金が足りなくなってしまう可能性も捨てきれません。老後も健康で働けるならまだしも、どこかのタイミングで大病を患ったり施設に入居することになって出費が増えたら大変です。

教育費も大切、でも自分たちの老後準備も大切!

もし老後にお金が足りなくなってしまったら、子どもに迷惑をかけることになるかもしれません。

「子どもが将来困らないように」と多くのお金をかけてきたのに、そのせいで子どもに頼ることになってしまっては、Kさん夫妻にとっても不本意ではないでしょうか。

教育費は確かに心情的に削りにくい支出ではあるのですが、長期的な視点を持ってコントロールすることが大切です。盲目的に支出するのではなく、安価なオンライン講座など他の手段で代替できないか、そもそも本当に必要なのか、常に考えましょう。

「子どものためにどうしても」と思うなら、ほかの支出を徹底的に見直す、専業主婦をやめて働きに出て家計の足しにする、さらに、子どもとじっくり話をして大学は奨学金を借りて通ってもらうなどの方法もあります。無理をしすぎてあとにひびかないよう、計画的に準備したいですね。

 
文・馬場愛梨(ばばえりFP事務所代表)
自身が過去に「貧困女子」状態でつらい思いをしたことから、お金について猛勉強!銀行・保険・不動産などお金にまつわる業界での勤務を経て、独立。むずかしいと思われて避けられがち、でも大切なお金の話を、ゆるくほぐしてお伝えする仕事をしています。AFP資格保有。

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