“片思いごっこ”とか、“推しのお仕事観察”とか、建前の盾があると人は強気になれるもの。建前を取り払って恥をかいたり何か失うくらいなら「このままでいい」と思うこともあるでしょう。それでも、やっぱり本心は素直で清らかで。

 場内の動揺などスクリーンのなかの千輝くんは知るよしもなく、真綾の頬に触れたり、うなじに口づけたり、「待ってやめて身がもたない!」と悶えそうなアプローチをこれでもか!と繰り出します。こともなげに真綾のジュースを味見するなど、間接キスも鮮やか。真綾が必死に守る片思いのボーダーを、しれっと飛び越えてきます。

 千輝くん、いや高橋さんの唇は艶やかで紅く形よく、罪深い官能美に満ちていて、見る者をさらにせつなくさせるのでした。まったくけしからん少年よ。

 で、そんな千輝くんと真綾がまわりから放っておかれるはずもなく、真綾に密かな思いを寄せるクラスメイト・手塚(板垣李光人)、千輝くんとお似合いのマドンナ的女子・花咲(中島瑠菜)さん、真綾の親友・知花(莉子)らがふたりの恋にさざ波を立て、そして彩ります。