アウトサイダーの視点から見つめた現代の日本

 本作を撮ったアンシュル・チョウハン監督は、2011年に来日。元々はアニメーターだが、自主映画『東京不穏詩』(18)で実写映画での監督デビューを果たし、第2作『コントラ』(19)は米国最大の日本映画の祭典「ジャパン・カッツ」で第1回大林賞に選ばれるなど、多くの映画賞を受賞した。気鋭の映像クリエイターであるアンシュル監督には、現代の日本社会はどのように映っているのか。また、少年犯罪に興味を持った経緯について語ってもらった。

アンシュル「日本の若い監督たちは、あまり今の日本を描いていないように感じたんです。日本社会においてアウトサイダーである僕には、女子高生が恋愛したり、かわいいカルチャーに出会うような映画ばかりに思えました。僕の前作『コントラ』も女子高生(円井わん)が主人公でしたが、彼女が埋もれていた日本の歴史を掘り起こそうとする毛色の違う作品にしています。今回も高校生たちの間で起きた事件から始まる法廷ドラマですが、僕自身がいちばん関心のあるテーマを盛り込んでいます」

 1986年生まれのアンシュル監督は、スーツをきっちりと着こなし、モデル然とした端正なルックスの持ち主だ。そのアンシュル監督が長年にわたって関心を抱いているテーマは「いじめ問題」だという。

アンシュル「日本でもいじめ問題はよくニュースになっていますが、映画にはあまりなっていないことを疑問に感じていたんです。僕自身、インドで過ごした幼い頃はいじめられた経験があります。パーソナルな問題でもあるんです。日本で生活するようになってからも、友達夫婦から『子どもがいじめに遭っている』という話をたびたび聞いています。前2作で脚本を書いてくれたランド・コルターは大阪在住なんですが、新しく書き上げてきたシナリオがいじめを題材にした今回の物語だったんです。資金集めは難航しましたが、どうしても映画化したいという想いが高まり、2021年に撮影に踏み切りました」