マロニエ産婦人科医院の産婦人科医である鈴だが、以前は大学病院に勤めていた。しかし5年前、伴の妻が緊急搬送され、妊娠していた子どもは無事に生まれたものの、妻は帰らぬ人となった。大学病院への搬送時点ですでに母子ともに危険な状態であり、対応した鈴には過失はなかったものの、伴は医療過誤だと担当医の鈴に訴訟を起こす。伴の訴えは棄却されたが、納得がいかない伴は、鈴を付け狙うようになっていた。

 第8話では、突然妻を失った伴が孤独を深めていく様子も描かれ、一星曰く「鈴に甘えている」伴は、最初こそ鈴への嫌がらせを暴走させ、周囲の人間が鈴を守ろうとする姿にも反発していた。だが、鈴と同じくマロニエに勤務する深夜が、10年前に妻と子を同時に亡くしていることを明かし、伴のやりきれない思いに寄り添う姿勢を見せたこともあって、鈴への嫌がらせもためらわれるようになった伴は、後に引けなくなり、命を絶とうと海に向かう。しかし、一星が連れてきた伴の娘・静空(戸簾愛)に父を呼ぶ叫び声に我を取り戻した伴は、その場で泣き崩れる。そんな伴を一星は静かに抱きしめた。

 その続きとなった第9話。震える寒さに、一行は銭湯へ向かう。女湯から声を掛けてくる静空にぎこちない返事をしながら、伴は穏やかな表情を見せる。伴が立ち直りつつある姿を見た深夜は、妻と暮らした東京の自宅にひとり戻り、自分も前に進む決意をする。

 深夜は、一星の勤務先であり、同級生の北斗千明(水野美紀)が社長を務める「遺品整理のポラリス」を訪れる。深夜と妻・彩子(安達祐実)の親友でもあった千明に、10年前に妻子を亡くして以来、そのままにしていた東京の自宅の遺品整理を依頼しに来たのだった。深夜はすべての処分を決めていた。