共産主義的な考え方や社会システムへの批判など、社会問題にメスを入れながらも、ポスタービジュアルにも使用されている富裕層たちが食事中に船酔いしてゲロをしまるシーンに加えて、トイレが逆流して汚物まみれにシーン、インフルエンサーが自撮りしているときに虫がブンブンうるさいなど、小学生が書いたような下品ネタもちょこちょこ入れてくる。
それによって極端なプロパガンダ作品ではなく、結局のところおバカなブラックコメディになっているのが、今作の愛される理由だろう。
そして富裕層や権力者が集まるアカデミー賞において、それらの当事者に向けられた風刺的な作品が評価されるというメタ的なジョークになろうとは予想していたのだろうか……。
今回のアカデミー賞は、前哨戦の流れから『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が圧勝というシナリオが出来上がっていただけに、あまり評価される機会が与えられなかったが、それでほっとしているアカデミー会員の富裕層たちもいるのではないだろうか。
【ストーリー】
モデル・人気インフルエンサーのヤヤと、男性モデルカールのカップルは、招待を受け豪華客船クルーズの旅に。リッチでクセモノだらけな乗客がバケーションを満喫し、高額チップのためならどんな望みでも叶える客室乗務員が笑顔を振りまくゴージャスな世界。しかしある夜、船が難破。そのまま海賊に襲われ、彼らは無人島に流れ着く。食べ物も水もSNSもない極限状態で、ヒエラルキーの頂点に立ったのは、サバイバル能力抜群な船のトイレ清掃婦だった……。
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