第8話のキーマンのひとりが、鷲津の親友であり、民政党の副幹事長を務める二世議員・鷹野聡史(小澤征悦)だった。鷹野といえば、女性に対するナンパな振る舞いの一方で、熱くなりがちな鷲津をなだめ、助言を与える立ち回りが印象深いキャラだった。泰生の転落事故調査にも協力的で、政治家からの圧力で警察が捜査をやめたことを鷲津に教えたのも鷹野だった。鷲津にとってはこれ以上ない味方のようにも思えたが、しかし鷲津が秘書を務めていた犬飼大臣(本田博太郎)を失脚させると、鷹野は鷲津に犬飼の地盤を継がせて出馬することを鶴巻に提案。鷲津が見事当選すると、鶴巻の側近として鷲津のいき過ぎた行動に目を光らせる場面もあり、どこまで信頼できる存在か判断が難しかった。特に第7話のラストでは、「鷲津亨をつぶせ」という鶴巻の命令に「わかりました」と従う様子を見せ、“鶴巻派”の親友が敵として立ちはだかるのかと思われた。

 だが実際には鷹野は、やはり鷲津の味方だった。派閥をなくしたいという政治信条を持ち、鶴巻を幹事長の座から引きずり下ろしたいという思惑も合致した。鶴巻に鷲津陣営の問題行動を逐一報告していたのは、そうすることで鷲津が鶴巻を追い落とすための決定的なネタを掴む時間を稼ぐためだったのだ。それにしても、普段はのらりくらりとした脳天気な二世議員の顔を見せながら、鶴巻との密室のやり取りの中で一瞬のぞかせた冷酷な目つきに、「鷹野まで敵になるのか……」と騙された視聴者も少なくないのではないだろうか。俳優・小澤征悦の底の深い演技力が感じられた場面だった。

 鷲津は、国内IT企業最大手「デジタルアンツ」と鶴巻の関係を秘書らに探らせ、地道な調査のおかげで、鶴巻の次男が経営する実体のないコンサル会社に対し、デジタルアンツから多額の金が流れているという帳簿データを掴む。鷲津と鷹野はこのネタを持って幹事長室に乗り込み、鶴巻と対峙するが、実はこれは鶴巻が仕掛けた「罠」だった。鶴巻は、鷲津たちがデジタルアンツに目をつけるとにらみ、デジタルアンツの会長にニセの帳簿を用意させたのだ。鷲津たちは一転して窮地に陥る。

 「鷹野くんはやっぱりお坊ちゃまだね」と得意げに語る鶴巻が「ふっ。これだから苦労知らずのボンボンは」と笑い飛ばす場面で、鷹野は拳を強く握りしめ、表情からも怒りや悔しさを隠しきれない。人知れず努力してきたにもかかわらず、自尊心を踏みにじられた二世議員の心情がひしひしと伝わる、小澤の熱演だった。小澤といえば、父に世界的指揮者・小澤征爾、母にモデルで女優の入江美樹をもつサラブレッド俳優。二世議員として周囲の期待を背負いながら政界を走ってきた鷹野と縁を感じずにはいられない。もしかすると、小澤自身が経験してきた苦悩が鷹野としての演技に深みを与えているのかもしれない。