サツマカワRPG
 8人のファイナリストの中で唯一ピン芸人における「三種の神器」である音響・照明・小道具をどれも使わず「身ひとつ」で戦っていた姿が本当にカッコよかった。ラストイヤーということもあり、これまでさまざまなライブで披露してきたショートコントを1つのストーリーにおさめて「ベストアルバム」のような形で披露していたのもグッときたし、そのどれもが破壊力抜群で面白かった。

 今や誰も気にしていないが、『R-1』の「R」は本来「落語」のRで、2002年の第1回大会は座布団の上で漫談を披露しなければならないという縛りがあった。サツマカワさんが披露したネタはその当時のルールでも戦えるネタで、前述の三種の神器のいずれかを使うのが当たり前になっている今のピン芸へのアンチテーゼのようにも思えた。

 もちろん、音響・照明・小道具を駆使することによってピン芸の幅がとんでもなく広がってレベルアップにもなっているので、どちらが良い悪いの話ではない。ただ今回はサツマカワさんが“唯一”だったためとても目立っていた。結果は4位だったが、現時点で『R-1グランプリ』公式YouTubeにて公開されているどのファイナリストのネタよりも再生されている(2023年3月8日時点)。シンプルイズベスト、まさに原点“怪奇”の素晴らしいパフォーマンスだった。