賃貸で35年間住んだ場合の総コスト
続いて、Aさんが毎月支払うローン返済額と同等の額を、月々の家賃として支払うBさんのケースについて考える。
Bさんは家賃が月額13万円のマンションを賃貸した。賃貸契約をしたときに敷金・礼金がそれぞれ1カ月分発生し、仲介手数料としても不動産屋に家賃1カ月分を支払った。またそのほかに、物件更新料として家賃1カ月分を2年に1度支払い続けた。
この場合は、35年間の家賃の総額が5460万円で更新手数料の総額が227.5万円(家賃17.5カ月分)、最初に支払った敷金と礼金、仲介手数料の合計が65万円(家賃5カ月分)となり、全てを合計すると5752.5万円となる。1年間平均では約164万円、月平均では約13万6000円となる。
長く住むことを考えると購入がお得に?
今回は月々の支払額を同額に設定し、35年間住んだ場合のそれぞれに特有な諸費用も含めた総コストを比較した。その結果、賃貸のほうがやや高い金額が出たものの、そこまでの差異は見られなかった。しかし、45~50年と長いスパンで見ることで双方の総コストは大きく異なってくる。
物件を購入したAさんは住宅ローンを35年がたった時点で払い終えており、その後かかるコストが管理費や修繕積立金、固定資産税などの税金に限られてくる。一方でBさんは家賃をずっと払い続けなければならない。購入物件の場合は経年劣化による修繕費がある程度まとまって必要になることを考えても、総コストは長く住めば住むほど購入マンションのほうが安くなる。
さらに、マンションを購入したAさんはその物件を「資産」として保有していることになる。総コストが賃貸より低くなるだけではなく、この資産を保有しているという価値も大きい。
新築マンションか中古マンションか?
ここまでマンションを購入するか賃貸するかについて比較してきたが、実際に物件を購入する際には新築マンションか中古マンションか、価格帯はいくらくらいのマンションにするかなど、物件を選ぶ上ではさまざまなポイントがある。
例えば新築マンションを購入する場合は、オートロックや監視カメラなどの最新設備を有している物件が多いことや室内設備をオプションで選べることができること、購入費用に占める諸費用の割合が小さいこと、新築から住むという気持ちの良さなどのメリットがある。
一方で中古マンションに比べて価格は当然高めとなる。また部屋が完成する前に購入したケースでは実際の部屋の日当たりや窓からの景色を確認することができないほか、実際に住んでいる人の評価もこれから形成されていくので、想定外の住みにくさに直面するかもしれない。
中古でマンションを購入する場合は、当然新築価格よりは物件の販売価格が安く、資産価値の下落幅も一般的に新築で買ったときよりは小さく抑えられることが多い。一方で購入の際には不動産仲介手数料などが必要になってくるため、購入価格に占める諸経費の割合が新築マンションを購入したときよりも大きくなる。
新築マンションとは違い、古い中古マンションだと設備的なセキュリティー面で課題があるケースも多い。一方で住民コミュニティーができあがっていると、住民による見守り活動で安全性が保たれているケースもある。
こうしたさまざまなポイントも踏まえながら、自らのライフスタイルに合わせた慎重な住まい探しが重要だろう。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/ZUU online
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