“ネタドラマ”を日本テレビの定番に
ここまでを冷静に振り返っていくと、第1話で界星堂病院が占拠されてから、実はそれほど物語は進んでいない。鬼の目的はあいまいなままで、人質の救出は進まず、「主人公が活躍している」と感じている人は少ないのではないか。それでも“ネタドラマ”としての楽しみを与えながら、考察をうながすクイズを続けることで、ここまで視聴者の興味関心を引っ張ってきたのは確かだ。
しかし、残り3話となった終盤の盛り上がりを左右するのは、コントではなく本物の熱演であり、主人公・武蔵を演じる櫻井と、ボスの青鬼を演じる菊池の演技だろう。櫻井は救世主としての活躍と過去を乗り越える姿を、菊地は鬼を率いるカリスマ性や怒りと悲しみをどう表現するのか。特に櫻井は10年前に放送され、業界内で「彼のベスト」と称えられる『家族ゲーム』(フジテレビ系)の熱演を超えたいところだ。
『大病院占拠』が思いのほか盛り上がっているのは、他の冬ドラマが保守的であることも理由の1つだろう。平成初期から中期に活躍した大御所脚本家や演出家に頼り切りのラブストーリーや医療モノ、あるいは何度目かわからないほど使い古された設定のファンタジーが並ぶ中、『大病院占拠』はいい意味で浮いている。
このところ刑事・探偵・医療ばかり放送して低迷を続けてきた日本テレビとしては、『あなたの番です』『3年A組-今から皆さんは、人質です-』『真犯人フラグ』で賛否を集めた“ネタドラマ”への回帰が奏功したのではないか。