予想しやすいベタな物語でハードルを下げて若年層視聴者を集めつつ、ネット上の考察をうながすクイズを提供する。さらに言えば、主演にアクションが得意ではない櫻井翔を起用したことも、「嘘だろ?」をじらして持ちギャグのように見せていることも、口元だけですぐにバレる菊池風磨を鬼のリーダーにしたことも、菊池風磨の「絶対に許さない」というドッキリでおなじみのセリフも、すべてが確信犯的なプロデュースにしか見えない。

 ドラマの作り手たちはクオリティを高めようと頭を使い、さまざまな技術を使おうとするものだが、当作のスタッフは必ずしもそうではないのだろう。ネット上には序盤から「コントにしか見えない」という声が見られていたが、それは間違っていないのかもしれない。当作のスタッフは「シリアスにやるほど、それが振りになって笑いが起きやすい」というコントのセオリーに沿ったスタンスを採っているからだ。

 そもそもテロリストの仮面を鬼にしたことも、わざわざわかりやすい色違いにしたことも、「緊張感を生み出す」という意味では真逆の設定であり、若年層向けのものだろう。多少チープな印象を与えてしまっても、若年層の個人視聴率を得るためなら、その程度は構わない。私が知る限り日本テレビは、この点で最もシビアなテレビ局だけに、『大病院占拠』は合点のいく作品なのだ。